70 BLUEへの憧れ 1 (小説)
三次予選1位突破おめでとう。どんな相手であろうとプレッシャーの中で結果を残した事はすばらしい。しかし、これからが本当の正念場だ。
サッカー小説を書いてみました。書いたら多くの人に読んで貰いたいのが人の常でして気が向いたら読んで見てください。
友里(ともり)歩夢(あゆむ)は自然と天を見上げた。一筋に延びる飛行機雲そして一面は鮮やかなブルー。憧れのサッカー日本代表を象徴するジャパンブルーと重なって見えた。顔を上空へ傾けたまま無意識にゆっくり瞼を閉じる。スッー、思い切り良く空気を吸い込んだ。ピッチ上に漂う酸素は胸いっぱいに膨らむ夢だった。試合開始前、繰り返される独特の緊張感、ほんの数秒間自分の世界に入り込む。
「おい友行くぞ」天の囁く声にも聞こえたミッドフィルダー戸口翔太が友里の肩を軽く叩く。
気持ちが逸る(はやる)のを静止出来ずに足を一歩前に踏み出し芝の感触を確かめる。心地よい風が頬を撫で目の前には鮮やかな緑の漣(さざなみ)が広がった。サッカーの神が、この国立競技場のピッチを通り抜けたのだ。
1964年東京オリンピック開催にあたり建設され、今では僕達高校生の間では神聖な場所、聖地とも呼ばれている。縦105メートル横68メートルのピッチ、50339人の収容人数を誇るスタンドはすり鉢状になり観客が迫ってくる勢いに圧倒させられる。釜本邦茂が木村和司がラモス瑠偉が歴代の名立たる選手達が活躍して来た由緒歴史あるこのピッチに人生を賭ける。高校3年間の集大成。どんな壁が立ちはだかろうと好きなサッカーを続ける為だった。3年間共にしてきた仲間と共に。
審判が試合の開始を告げる笛を口に運ぶ。大勢の観衆の声に掻き消されるでもなく人生を左右するホイッスルが高らかと鳴り響いた。 ピィッー 回り始めた人生ゲーム。友里の鼓動は高鳴り心の奥底では炎が燃え滾っていた。希望の光に手を、足を、懸けるべく
2008年全国高等学校サッカー選手権大会決勝戦。僕達、東北勢が決勝に昇り詰めたのは過去86回という大会の中で第34回、36回、45回大会と三度の決勝進出を果たし第36回大会には優勝を成し遂げた秋田県秋田商業と第39回大会の岩手県遠野高校、2006年の第85回大会には優勝を攫(さら)った岩手県盛岡商業だけだった。北海道、上越、東北にとって冬の期間、雪で思うような練習が出来ないのは不利な条件だったが自分を含め11人の選手そしてそれを支えてくれたみんなのお陰で何とかここまで漕ぎ着け勝ち続ける事が出来た。
「友、友」
キャプテンでもあるディフェンダーの矢沢がゲームの主導権を握る為にボールを取ったら落ち着いて回せと言わんばかりに叫んでいた。序盤はどの試合を見ても両者の攻防と主導権争いでボールが中盤を行ったり来たりで落ち着かないケースがほとんどだった。
友利は相手チーム静岡県の強豪校、藤城第一高校、日本代表のU18にも招集され今大会5試合5得点と絶好調のミッドフィルダー中谷(なかや)勇(ゆう)翔(しょう)についていた。中谷は天性のドリブラーと呼ばれていた。音楽を奏でながらドリブルしているかの様な動き日本人には珍しくブラジル人特有なリズミカルなドリブルを得意としていた。
競り合いになった相手ディフェンダーが苦し紛れに放ったボールがセンター付近にいた友利と中谷の中間へ落下してくる。友利の体が中谷より一歩早く反応した。
「よし、貰った」
勢い良く一歩踏み出しジャンプした。一歩遅れをとった中谷は遅れながらもジャンプする寸前の友利に斜に構えながら肩の角度を変え体を密着させる。友利は中谷に体を寄せられ思い描いたようにジャンプが出来ない。ボールとの距離が夢との距離にも感じた。ボールは友利の頭を霞めワンバウンドで見方自陣の芝生の上へ転がる。予測の範疇か?瞬時に動き出した中谷。ボールに走る中谷の姿が狙った獲物を追うチーターのようにも見えた。一瞬にして三歩の差は付いていた。なかなか縮まらない差。これが日本代表に召集される選手との違いなのか?追いついた時にはすでにペナルティーエリア付近でシュートレンジに入っていた。身長181cmと178cm高校生にしては屈強な体。ディフェンダー矢沢悠と丸山健太郎がこの試合で終始封じなければいけない相手、中谷の前に立ちはだかった。ディフェンダーを前に中谷はフェイントの基本マシューズフェイント、サイドステップで左に大きく踏み込み左を駆け上がるように見せ掛け右にぬく素振りを見せた。イングランドを代表するウィングプレーヤーでエリザベス女王からナイトの称号を授与されているドリブルの魔術師サー・スタンリー・マシューズの名前が付いていた。センターバックの矢沢は一瞬左に振られたが日頃の練習1対1で味方選手、フォワード佐藤陽生のフェイントに付き合わされていた事もあり惑わされてはいなかった。ほんの数秒に込められた濃密な凝縮、試合を左右する緊迫の駆け引きが続く。つられて来ない矢沢を見るや中谷は抜き去ろうと縦に一瞬時間差を作りストップフェイクでニアサイドへスピードを一気にあげた。矢沢の予測するスピードを超えていた。ストップフェイクの時間差が目の錯覚を生み矢沢の動きは止まってしまう。中谷のプレーの残像が残る。危機本能と練習の積み重ねだった。斜め後ろからサイドバック丸山がカバーに入り足を延ばす。シュートか?
フォワードがサイドに流れるのが横目に見えた友利がサイドバック新藤一喜に大声で叫んでいた「新藤、マーク」新藤は内側に絞ろうとしていたが叫び声を耳にし首を左右に振ると敵選手の位置を確認した。
藤城第一高校のユニフォームは体内を循環し続ける血、深紅だった。デコを司令塔として最高プレイヤーの呼び声高いクリスティアーノ・ロナウド率いるポルトガル代表のユニフォームに似ていた。そしてこのユニフォームがさらに僕達を威嚇する。右サイドマイナススペースに物凄い勢いで走りこむ選手の姿。今大会、影を潜めるフォワード高橋龍之介だ。攻撃パターンがすでに2種類は出来あがっていた。中谷はシュート体勢に入ると視線をゴールへ向けたまま右サイドに走りあがってきた味方選手、高橋へ利き足の膝下と足首のスナップだけでアウトサイドにかけ絶妙なスピードと針の糸を通すと言わんばかりのコースへパスを出した。サイドバックの新藤が高橋のマークに遅れる。西ヶ丘高校のディフェンダー陣は攻守の切り替えの速さと選手のスピードの速さに完全に振り回されていた。中谷はパスを出すと近いニアへ走りこむ素振りを見せ遠い方向、ファーサイドに走り出す。水を得た魚だった。縦横無尽に動いている。藤城高校の選手がゴール前へなだれ込んで来る。ピッチが体なら選手は循環し続ける血だった。この時点で攻撃パターンが数種類も出来上がっていた。使用されていた5号球のボールは確かに選手達の未来、そしてゴールへ繋ぐ意思の継承。高橋は右足の甲、内側の親指付け根付近で擦り上げるようにボールを放った。思いの込められたボールは詰め寄る丸山の脇を通り抜けファーサイドゴールポスト付近へ走り込んだ中谷へ正確無比なピンポイントで上空を緩やかな弧を描いて飛んできた。藤城高校の攻撃パターンなのか?キーパー佐々木陸が渾身の力でジャンプをしフィスティングで逃れようと手をのばすがカーブのかけられたボールがゴールから逃げていく。中谷がヘディングでゴール前に落とすであろうと判断した友利は走り込んで来た敵2トップの一角、田中快斗のマークについた。
男としてサッカー選手としての意地そして責任感だった。すでに一度抜かれた矢沢が遅れながらも中谷に体を寄せるがすでに遅く。中谷は勢い良く片足で踏み切り反り返りながらヘディングで力強くインパクトした。まるで敵を打ち破ろうと鼓を打って舞っている姿だった。佐々木は体勢を崩しながらも空気を切り精一杯右手を伸ばしながらも横跳びをした。宙に浮かんだ佐々木の体は躍動し撓(しな)る。
パサッ 乾いた音が聞こえた。
一番高き地点で衝撃を与えたボールはキーパー佐々木の右手の上を通り抜けゴールポスト擦れ擦れでゴールネットに吸い込まれていた。スタジアムの歓声がまた一段と高鳴り共鳴していく。
サッカー小説を書いてみました。書いたら多くの人に読んで貰いたいのが人の常でして気が向いたら読んで見てください。
友里(ともり)歩夢(あゆむ)は自然と天を見上げた。一筋に延びる飛行機雲そして一面は鮮やかなブルー。憧れのサッカー日本代表を象徴するジャパンブルーと重なって見えた。顔を上空へ傾けたまま無意識にゆっくり瞼を閉じる。スッー、思い切り良く空気を吸い込んだ。ピッチ上に漂う酸素は胸いっぱいに膨らむ夢だった。試合開始前、繰り返される独特の緊張感、ほんの数秒間自分の世界に入り込む。
「おい友行くぞ」天の囁く声にも聞こえたミッドフィルダー戸口翔太が友里の肩を軽く叩く。
気持ちが逸る(はやる)のを静止出来ずに足を一歩前に踏み出し芝の感触を確かめる。心地よい風が頬を撫で目の前には鮮やかな緑の漣(さざなみ)が広がった。サッカーの神が、この国立競技場のピッチを通り抜けたのだ。
1964年東京オリンピック開催にあたり建設され、今では僕達高校生の間では神聖な場所、聖地とも呼ばれている。縦105メートル横68メートルのピッチ、50339人の収容人数を誇るスタンドはすり鉢状になり観客が迫ってくる勢いに圧倒させられる。釜本邦茂が木村和司がラモス瑠偉が歴代の名立たる選手達が活躍して来た由緒歴史あるこのピッチに人生を賭ける。高校3年間の集大成。どんな壁が立ちはだかろうと好きなサッカーを続ける為だった。3年間共にしてきた仲間と共に。
審判が試合の開始を告げる笛を口に運ぶ。大勢の観衆の声に掻き消されるでもなく人生を左右するホイッスルが高らかと鳴り響いた。 ピィッー 回り始めた人生ゲーム。友里の鼓動は高鳴り心の奥底では炎が燃え滾っていた。希望の光に手を、足を、懸けるべく
2008年全国高等学校サッカー選手権大会決勝戦。僕達、東北勢が決勝に昇り詰めたのは過去86回という大会の中で第34回、36回、45回大会と三度の決勝進出を果たし第36回大会には優勝を成し遂げた秋田県秋田商業と第39回大会の岩手県遠野高校、2006年の第85回大会には優勝を攫(さら)った岩手県盛岡商業だけだった。北海道、上越、東北にとって冬の期間、雪で思うような練習が出来ないのは不利な条件だったが自分を含め11人の選手そしてそれを支えてくれたみんなのお陰で何とかここまで漕ぎ着け勝ち続ける事が出来た。
「友、友」
キャプテンでもあるディフェンダーの矢沢がゲームの主導権を握る為にボールを取ったら落ち着いて回せと言わんばかりに叫んでいた。序盤はどの試合を見ても両者の攻防と主導権争いでボールが中盤を行ったり来たりで落ち着かないケースがほとんどだった。
友利は相手チーム静岡県の強豪校、藤城第一高校、日本代表のU18にも招集され今大会5試合5得点と絶好調のミッドフィルダー中谷(なかや)勇(ゆう)翔(しょう)についていた。中谷は天性のドリブラーと呼ばれていた。音楽を奏でながらドリブルしているかの様な動き日本人には珍しくブラジル人特有なリズミカルなドリブルを得意としていた。
競り合いになった相手ディフェンダーが苦し紛れに放ったボールがセンター付近にいた友利と中谷の中間へ落下してくる。友利の体が中谷より一歩早く反応した。
「よし、貰った」
勢い良く一歩踏み出しジャンプした。一歩遅れをとった中谷は遅れながらもジャンプする寸前の友利に斜に構えながら肩の角度を変え体を密着させる。友利は中谷に体を寄せられ思い描いたようにジャンプが出来ない。ボールとの距離が夢との距離にも感じた。ボールは友利の頭を霞めワンバウンドで見方自陣の芝生の上へ転がる。予測の範疇か?瞬時に動き出した中谷。ボールに走る中谷の姿が狙った獲物を追うチーターのようにも見えた。一瞬にして三歩の差は付いていた。なかなか縮まらない差。これが日本代表に召集される選手との違いなのか?追いついた時にはすでにペナルティーエリア付近でシュートレンジに入っていた。身長181cmと178cm高校生にしては屈強な体。ディフェンダー矢沢悠と丸山健太郎がこの試合で終始封じなければいけない相手、中谷の前に立ちはだかった。ディフェンダーを前に中谷はフェイントの基本マシューズフェイント、サイドステップで左に大きく踏み込み左を駆け上がるように見せ掛け右にぬく素振りを見せた。イングランドを代表するウィングプレーヤーでエリザベス女王からナイトの称号を授与されているドリブルの魔術師サー・スタンリー・マシューズの名前が付いていた。センターバックの矢沢は一瞬左に振られたが日頃の練習1対1で味方選手、フォワード佐藤陽生のフェイントに付き合わされていた事もあり惑わされてはいなかった。ほんの数秒に込められた濃密な凝縮、試合を左右する緊迫の駆け引きが続く。つられて来ない矢沢を見るや中谷は抜き去ろうと縦に一瞬時間差を作りストップフェイクでニアサイドへスピードを一気にあげた。矢沢の予測するスピードを超えていた。ストップフェイクの時間差が目の錯覚を生み矢沢の動きは止まってしまう。中谷のプレーの残像が残る。危機本能と練習の積み重ねだった。斜め後ろからサイドバック丸山がカバーに入り足を延ばす。シュートか?
フォワードがサイドに流れるのが横目に見えた友利がサイドバック新藤一喜に大声で叫んでいた「新藤、マーク」新藤は内側に絞ろうとしていたが叫び声を耳にし首を左右に振ると敵選手の位置を確認した。
藤城第一高校のユニフォームは体内を循環し続ける血、深紅だった。デコを司令塔として最高プレイヤーの呼び声高いクリスティアーノ・ロナウド率いるポルトガル代表のユニフォームに似ていた。そしてこのユニフォームがさらに僕達を威嚇する。右サイドマイナススペースに物凄い勢いで走りこむ選手の姿。今大会、影を潜めるフォワード高橋龍之介だ。攻撃パターンがすでに2種類は出来あがっていた。中谷はシュート体勢に入ると視線をゴールへ向けたまま右サイドに走りあがってきた味方選手、高橋へ利き足の膝下と足首のスナップだけでアウトサイドにかけ絶妙なスピードと針の糸を通すと言わんばかりのコースへパスを出した。サイドバックの新藤が高橋のマークに遅れる。西ヶ丘高校のディフェンダー陣は攻守の切り替えの速さと選手のスピードの速さに完全に振り回されていた。中谷はパスを出すと近いニアへ走りこむ素振りを見せ遠い方向、ファーサイドに走り出す。水を得た魚だった。縦横無尽に動いている。藤城高校の選手がゴール前へなだれ込んで来る。ピッチが体なら選手は循環し続ける血だった。この時点で攻撃パターンが数種類も出来上がっていた。使用されていた5号球のボールは確かに選手達の未来、そしてゴールへ繋ぐ意思の継承。高橋は右足の甲、内側の親指付け根付近で擦り上げるようにボールを放った。思いの込められたボールは詰め寄る丸山の脇を通り抜けファーサイドゴールポスト付近へ走り込んだ中谷へ正確無比なピンポイントで上空を緩やかな弧を描いて飛んできた。藤城高校の攻撃パターンなのか?キーパー佐々木陸が渾身の力でジャンプをしフィスティングで逃れようと手をのばすがカーブのかけられたボールがゴールから逃げていく。中谷がヘディングでゴール前に落とすであろうと判断した友利は走り込んで来た敵2トップの一角、田中快斗のマークについた。
男としてサッカー選手としての意地そして責任感だった。すでに一度抜かれた矢沢が遅れながらも中谷に体を寄せるがすでに遅く。中谷は勢い良く片足で踏み切り反り返りながらヘディングで力強くインパクトした。まるで敵を打ち破ろうと鼓を打って舞っている姿だった。佐々木は体勢を崩しながらも空気を切り精一杯右手を伸ばしながらも横跳びをした。宙に浮かんだ佐々木の体は躍動し撓(しな)る。
パサッ 乾いた音が聞こえた。
一番高き地点で衝撃を与えたボールはキーパー佐々木の右手の上を通り抜けゴールポスト擦れ擦れでゴールネットに吸い込まれていた。スタジアムの歓声がまた一段と高鳴り共鳴していく。



