66 「連鎖」 一 序章

4月10日から、なんとなく書き始めた短編小説「連鎖」ですが修正、加筆をし完結させましたので是非読んで何を感じたか感想をコメント欄に残して頂けると有り難いです。脚本らしくなった所もありますが。評判がよければ第二段。木崎、梶原、ほか新たなキャラクターも加え世界に飛び出し活躍する姿を小説に書こうかな、などとも考えています。今はサッカーの短編小説を書こうと思案をめぐらしてる最中です。出来上がり次第UPしていきますのでしばらくお待ちください。

文章足らずの部分も有りますが、それでは架空の物語ミステリー小説「連鎖」をお楽しみ下さい。
※NEXTページに移った際、サイドバーが重いらしく少々時間が掛かるみたいですのでご了承下さい。


主な登場人物
リアルテレビプロデューサー  木崎(きざき)修(しゅう)吾(ご)  41歳
東央新聞(地方新聞)記者   梶原(かじわら)有我(ゆうが)  41歳
英知新聞 部長         宮部雅之  52歳
英知新聞 経済部所属記者  藤巻総司  29歳
2ちゃんねる投稿者       佐山浩二  21歳
                   安西真   32歳
                   坂本ゆみ  19歳
リアルテレビ局長        山崎雄大  65歳
木崎修吾の母          木崎優子  34歳
テレビ局スタッフ アシスタント 山田秀雄  22歳
カメラマン             高橋正哉  33歳
音声                西村慶一  27歳
政治家(国土交通大臣)    大木龍造  68歳
地震研究所所員         大貫信隆  45歳
メイド喫茶店員          水谷みこと 21歳
天才プログラマー        小塚充   26歳
リアルラジオプロデューサー  辻 邦之  43歳



一序章

東京では肌寒く感じる季節を通り過ぎ、人々の気持ちを高揚させる桜の花がひとりひとりの人生の節目を見届けるかのように満開に咲き誇った。しかし、花の輝く日々は儚く短い。そんな花びらもひらひらと地上に舞い落ち地面はうっすらと花(はな)絨毯(じゅうたん)を敷き詰めていた。まだ木々(きぎ)に残存する花一輪一輪を世界を浄化するかのように夜空の月が照らし出す。

「カンパーイ」
今日は新入社員の歓迎会という事もあって久しぶりの飲み会である。店内はサラリーマンや学生がごった返し、笑い声、話し声、いろんな声が雑多に飛び交い賑わいを見せていた。

「あっオネェさーん、こっちビール追加」
藤巻は新入社員の心の不安を取り除こうと自分の経験談を交え、気遣いを見せながらも仕事の話をしていた。そんな行動を見た上司の宮部は誰もが通る道で教えるべきものではない、自分で習得するものだと言わんばかりに会話に割って入る
「おい、藤巻、飲んでる席で仕事の話はないだろ」
「いやぁ、そう言われても宮部部長、新入社員のみんなには頑張ってもらわないと」
「まぁ、だけどお前も先輩の姿を見て独自の努力でここまでになれたんだから」そう諭(さと)すと
「取り合えず飲め飲め、明日から頑張って貰おうやないか」
そんな会話をしながらも酒が進んでいく

そして緊張気味だった新入社員達も酒の力を借りてではあるが会話が盛り上がる輪の中に打ち解け、時間もあっという間に過ぎていった
終電の時間が迫り、新入社員たちは頃合いを見計らうと
「お先に失礼しまーす」「お先に失礼しまーす」
笑顔で会釈しながらぞろぞろと席を立つ
宮部もほろ酔い状態ではあったが
「おうそうか、未来の星達よ、明日から頼むよー」
などと陽気に振舞い、見送った

「おい、藤巻、みんな帰えっちまったぞ俺たちも帰るぞ」
「んっはぁーい」
返事もかろうじて出来るといった具合に藤巻は久しぶりに流し入れた酒に酔い潰れテーブルに伏せていた。
「何でお前が先に酔い潰れるんだよ。上司を解放するのが、 お前の役目だろ」
そんな事を言うのも宮部が藤巻のこんな姿を見たのは初めてで藤巻は連夜の徹夜続きで疲労が蓄積し、見ての有様だった
「まぁ、たまにはいいか。ストレスも溜まっているだろうからな」
勘定を済ませた宮部は藤巻の腕を抱えると
「しっかりしろよ。おい」と正気を促し外に出る
目の前にはネオンが皓(こう)皓(こう)と灯り帰宅を急ぐ人、梯子(はしご)する人、種種様々な人達が行き交い、路上は昼の顔とはまた別の一面を見せていた。そんな中、宮部は、目の前を通り過ぎようとした一台のタクシーを慌てて止める。キィッー

「すいません、豊洲までお願いします。おい、藤巻、後はちゃんと案内して帰れよ、じゃぁ運転手さんお願いします。」

初老の運転手は慌てて止めた事と泥酔の客だった事も有り、ぶっきらぼうに
「はい」と返事をし車を発進させた


背もたれからずれ落ちていく体、息苦しいのか唸る藤巻
「んんっー」
「すいません。お客さん、お客さん、この道は?」

夢の中を彷徨(さまよ)いながらも、ずれ落ちた体を起こすと徐々にではあるが現実に戻り、周りを見渡すと微かに反応する脳が対応した。
「次の信号を左で次の次の信号を右に行った500m先で止めて下
さい。」
口も少しろれつがまわっていない状態で車を降りた藤巻は、 千鳥足で家路に着くなり住み慣れた玄関の明かりを点灯し靴を脱ぎ捨てるとすぐさま、キッチンに向かい水道の蛇口をひねった。ジャー、勢い良く出た水は一瞬にしてグラスいっぱいに溢れ、その水で酒による喉の渇きと眠気を振り払うように一気に飲みほし、その後お気に入りのデスクチェアーにドンッと腰掛け、一息ついた。

顔を片手で拭く仕草をしながら「あー効くなー久しぶりの酒は」と呟きもう片方の手はパソコンの電源へ手が伸びる。ぐるぐる回る脳を抑止させ、そのパソコンで日課となっているメールをチェックしその後ニュースに目を通す。明らかに霞んで見える目を擦りながら画面を見直すと、そこには画面から飛び出さんとばかりに地震、津波予想なるものがドーンと目に飛び込んで来た
「何!2時間後に関東近県で大規模地震発生の可能性あり」
何かの間違いだろ今の地震検知能力で2時間後の地震検知など無理なはずだ。酔いと眠気で頭が錯乱する。

英知新聞経済部に在籍している藤巻は会社ホームページアクセスアップに貢献すべくブログを立ち上げていた。

そして、藤巻は酔いと眠気の影響もあり現実なのか?夢なのか?思考不安定な状態に陥り新聞記者であるという職業の社会的責任を忘れ、多くの人々に知らせなければという思いで自信のブログに指が伸び、キーボードをひとつずつ叩いていく2JIK・・・
「2時間後に関東近県で大地震の可能性大!」と自身のブログに文字を打ち込み、そして、脳と体が絶えかねたように机に伏し、誰かが誘い込んでいるかのようにまた深い眠りの中へ吸い込まれていった

部屋はパソコン画面の明かりと玄関のわずかな光がぼんやりと点り(ともり)、魔法の箱とも言えるパソコン画面の右隅に12時55分という時間を告げ、2時間後の地震のカウントダウンを開始した

その藤巻のブログは新聞記者であるが故に信頼度が高く、読み易さも加わり、1日のアクセス数が1万件もあった。これが大事件に導く序章へと変って行く

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65 「連鎖」 二 拡散

二 拡散  

藤巻ブログの大ファンだった一人の学生がこの記事に目を通す
「おっ藤巻さん更新してる」
その佐山が在住していたのが神奈川県だった事もありすぐさま目に止まる
「えっ!大地震発生?それも関東近県、神奈川も含まれてるけど」

待てよ今日は4月1日(エイプリルフール)じゃぁないよな。もしそうだとしても、もっとシャレの効いた冗談をするだろ。でも新聞記者である藤巻さんが掲載しているという事は信憑性高いと判断せざるを得ないし、と悩みに悩んだあげく何を思ったのか佐山は掲示板最大の2ちんねるに書き込みをする

佐山は藤巻ブログの重要性を感じ冷静に凝視していた。だからこそ掲載時間を正確に記憶していた事もあり
「2時間後に関東近県で大地震の可能性大!正確に言うと1時間 55分後かな」と2ちゃんねるに書き込んだ
すると日本最大の掲示板というだけあって数秒も経たずに入場者が訪れる
「おいおい、それ、どこから仕入れた情報だよ?」
32歳会社員 安西
「新聞記者のブログからだけど」 佐山  
「新聞記者?」 安西
その後も興味津々の話題に続々と増殖する入場者。 
「私も見たよ。あのブログ、読みやすいし解りやすいんだよね」
19歳フリーター ゆみ
「地震の揺れが起きてからの検知なら解るけど、2時間後に起きる地震の予知なんて出来るのか?」  安西
「何と言っても経済部の新聞記者ですよ。新しい地震検知機が開発されて、 それに伴っての情報じゃぁないんですか。」  佐山
「きっとそうですよ。経済部の記者ですもん」  ゆみ
「そうかなー、もしそうだとしたらこんな事していられないぞ。少しでも多くの人に知らせなければ大変な被害が出てしまう。俺達に
出来る事は・・・」  安西
「テレビ局に電話して緊急テロップ流して貰えばいいじゃん」ゆみ
「信じてくれないでしょう。僕達の言う事なんて」  佐山
「そうだな、ネットでとにかく広めればマスメディアでも取り上げてくれるかも。多くのブロガーや見てくれた人に掲示板に掲載して貰おう。」  安西

そして、どこの者とも解らない面識もない者達が藤巻のブログを見、2ちゃんねるを見、ブログや掲示板に「1時間55分後に関東近県で大地震の可能性大!」の言葉を掲載するや、あっという間にネット上へ強力なウィルスが蔓延するように広がっていく。日本人の特性ともいうべきか集団からはずれるのを好まない民族性からか、冷静さの欠如か、掲載時間が違うにも関わらず総てといっていいほど1時間55分後という時間が躍った。そして、深夜1時にも関わらず膨大なアクセス数によってサーバーがダウンし、 アクシデントにより2ちゃんねるに寄せられていた総ての会話が何かを予兆するかのように消滅してしまう。

「どうしたんだ」
「サーバーがダウンした模様です」
「原因は?」
「一番に考えられるのは多重アクセスによりサーバーに負荷が掛かりプロセスダウンしたか?外部からの攻撃ではないかと思われます」
「緊急措置を講じないと」
「はい、早急に対応します」

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64 「連鎖」 三 疑惑

三 疑惑

リアルテレビのニュース担当木崎が特番の為の資料集めをパソコンでしていた。
「どれどれ次はこれか?」
クリックをすると次から次へと開くサイトには関東近県、大地震、関東近県、大地震の氾濫する文字が躍り連続的に視覚へ入り込んでくる。
「何だよ、コレ!」
最初は悪戯の類の物だろうと思っていたがあまりの掲載量の多さに不安を感じた木崎は、周りにいたスタッフを呼び
「おい、気象庁に確認、それと他の局で地震の緊急避難テロップを流している所がないか?調べろよ。ついでに新聞社、ラジオ、官邸だ」
情報の出所はどこなんだ?一番考えられるのは信憑性の高い新聞系のサイトだな。でも、これだけ広がっているという事はガセの可能性は低いという事か?でも2時間後の地震予知?脳が今まで以上に活発に動き出し疑惑がつきまとう情報の答えを導き出そうとする。
情報の確認を終えたスタッフが駆け寄って来る。
「木崎さん、気象庁は何ら情報を出していません、それとどこの局も緊急避難テロップ打ってません」
「んー」
両手で頭を抱えながら、そのまま手を振り下ろしデスクを叩いた
バーンッ
「何だよ、コレ」
「もし、情報が本当だとするなら被害を少なくするか?拡大するかは俺達の働きに懸かってんぞ」
声高らかにスタッフに発破をかけると、ただならぬ木崎の姿にスタッフ達の視線が集中した

そんな折、官邸の記者会見場が揺れ出し、マスコミの動きを察知した秘書が大臣へ連絡を取っていた。
「もしもし、そんなに急がねばならない事態なのかね」
「いいえ、大した事はないと思われますが今まで不祥事続きですから迅速に手を打った方が良(よ)いかと思いましたので」
「おう、そうか」
公用車の後部座席で携帯電話を片手に貫禄たっぷりに会話する政治家、大木龍造の姿があった。眼光鋭く深く刻まれた眉間の皺(しわ)が長年(ながねん)の政治家生活を伺えさせた

そしてスタジオ局内でも微量ではあるが揺れを感じる ユラユラ、ガタガタ、照明器具やスタジオ内にあった器具が微かではあるが揺れ情報に信憑性を増していく

「おい、何だ。地震か?」
「再度、問い合わせろ」  

気象庁設置の地震計は反応を見せなかった
地震計は一本の糸の先に錘(おもり)を付け、その錘によって振動を計測する振り子の原理を用いていた。しかし、じわじわと進むゆっくりとした地面の動きを検出する事は難しく地面の動きを記録する万能な道具ではなかった。この時の地震の地面もゆっくりとした動きだった。

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63 「連鎖」 四 決断

四 決断
 
脳は貪欲に思考を続ける。そして木崎は決断する

「もしもし局長ですか?今の揺れを感じましたか」
眠る前に読書をしていたリアルテレビ局長の山崎
「木崎君、こんな夜中に地震を心配して電話してきた訳じゃぁな
いんだろ。よっぽどの事情のようだな」
「はい、ネットに1時間55分後に関東近県で大地震の可能性大の文字がどこかしこに踊っています。裏を取っているのですが時間がかかりそうなんです。関東7都県だけでもテロップを流さないと大変な事態が起こり兼ねないです」
「木崎君、冷静に考えないといけない。私達、報道する立場の人間が海とも山とも解らない情報をテレビで放送する事は決して、してはならない事だ。それと夜中の1時を過ぎている。今どれだけの人がテレビを見ている」
「しかし、局長、人の命を助ける報道も必要なのではないですか。
それがもしガセだとしても僕は間違った報道だとは思いません。
少なくとも人の命を救う正義の報道だと思います。局長、必ず国民
は解ってくれるはずです。お願いします」
「木崎、責任は誰が取る。局長である私に総て降りかかって来るん
だぞ。絶対、裏が取れない限り、命を助けようとする報道であって
も、それは報道する側の立場がやってはいけない事だ。解ったな木崎」
「局長」    

ツーツーツー 無残にも携帯電話が切れた


木崎は自分のデスクに足を向け歩き出した。背中が物悲しく、それでいて何かを主張していた。デスクに着くとおもむろにペンを取り出し文字を書き始める。この会社の報道畑で19年間働いてきましたが今回だけは、どうしても正義を貫きたいのです。私は報道マンの前に、地球の中にいかされて生きている、ちっぽけな人間です。その人間が、多くの人々がこれから 起きるかもしれない最悪の事態から逃れる為に手を貸す事が出来るのであれば喜んで貸したいのです。山崎局長、私は職を辞して正義を貫きます。デスクの上の紙には、そんな文字が記されていた。


もう、すでに大地震までの時間は1時間30分に迫る

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62 「連鎖」 五 過去

五 過去

木崎はリアルテレビに残り、地位や名誉を手にする事も出来た。
しかし、茨の道へ足を踏み出した。そこには、拭えない母への想いが心底に沈殿していたからこそだった

空一面が青一色に広がり太陽が眩しく感じる10歳のある日の午後だった。なぜか、その日だけは友達の遊びの誘いもなく自宅でテレビを見ていた木崎に、「行って来るからね、ちゃんと留守番しとくんだよ」と言い、買い物に出掛けた母親を、木崎はずっと待っていたがいつも優しく接してくれる母親は帰ってくる事はなかった。母親は指名手配犯の連続殺傷事件に巻き込まれ大勢の人が逃げ惑う中、心臓に持病を抱えていた母は逃げる途中、心臓発作をお越し、帰らぬ人となってしまった。連続殺傷事件が母の病気を誘発したといえる「どうして、どうして・・・」そんな言葉が木崎の頭を支配し現実から逃れ、ずっと思い出と一緒にいたかった。しかし、現実世界は待ってはくれず、木崎家の生活を一変させ木崎修吾は逞しくならざるを得なかった。

それから12年後、木崎は真実を伝える仕事を選択しリアルテレビに入社する事を決意する。後(のち)に連続殺傷事件を担当していた現局長に、こんな話を聞いていた。「殺傷事件が起きる2時間前に不審人物が徘徊していたという情報は入っていたが情報が不確実な為、住民により不安を与えてしまうとの大半の意見でテレビ放送は見送った」と

木崎は、報道規制のかけられていない状況下で、なぜ、報道しなかったんだ。もし放送されていたなら母は買い物に出掛け命を落とすまでには到っていなかったのではないか?と悔やむと共に報道マンと一人の人間としての狭間を揺れ動き、心の奥にっずっとしまい込んできた。

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