50 「届け一葉」

勝手ではありますが50文章記念でちょっと泣ける短々編小説を書いてみました。よかったら時間のある際読んでみてください。おもしろいかどうかは保証出来ませんが(フィクションです。)

「届け一葉」

何の変てつもない日曜日、たまの休息ではあったが息子に急き立てられ公園に出かけた。公園の片隅にあるブランコで家族の笑い声がし、ほのぼのとさせる。陽が程よくあたり開花した桜も半分ほど散り公園の地面が花びら一面に広がる勢いだ。まるでコーヒーの中に入れた白いミルクが徐々に広がって侵食していくようにもみえる。久しぶりの息子との公園とあって息子は、はしゃぎ「お父さんすべり台であそぼーう」といつも以上に元気だ。

遊び疲れた息子がベンチで休んでいた俺の横にちょんと座り、少し時間をおいて

「お父さんお願いがあるんだ。」今年5歳になる息子が口を開いた。
「何だ。言って御覧」
「んー」もじもじしながら「50円欲しいんだ」と

50円?何に使うんだ。想像をめぐらしてみる。今まで息子が俺にお金が欲しいなんて言った事はなかったが、なんだろう。頭が駆け巡る。お菓子でも買うのか?おもちゃといっても50円じゃぁたかが知れてるし、俺に言う事に意味があるとすれば好きな女の子でも出来てプレゼントでも。それにしても50円?50円?50円?んー 50円と言えば葉書が50円か。想像するのも尽きた頃

「何に使うんだ」と聞いて見る。すると息子は「ハ ガ キ」と屈託のない笑顔で答えた。

やっぱり葉書か。自分の想像と一致した事に満足し、笑みを浮かべた。まだ、俺の想像力もいけてるな。血の繋がった家族だからな、なんて思いながら、それにしても5歳の息子がハガキ?息子→ハガキ→? どうしても点が線に結びつかない。ミステリーの謎解きをするように。すぐさま笑みも消えせ、頭が想像をかきたてていた。

「葉書?何に使うんだ」とやさしく聞いて見る。

息子は俺の耳に口を近づけ声小さく「男の約束だよ。誰にも言っちゃ駄目だよ」

そうか好きな女の子にでも葉書を送って口説こうとでもしてるんだなと安易に考えてしまった。そんな事を思っていると息子は「テレビで見たんだ」と「テレビ?」点が線に結びつくと思っていたら別の方向へ方向転換か?また疑問の嵐だ。息子との話がますます面白くなってきた。

「ハガキは1枚でしょ」
「うん」
「でも葉っぱになるんだって」

息子が何を言っているのか最初は解らなかった。

「んー」そうだ。葉書は何も記載していないと1枚、文字を書いた時点で1通、大事な心のこもった葉書などは葉を慈しむなどの意味もあって1葉。さては、この事を言っているのか。頭の片隅にあった記憶がコンピュータのごとく答えを導きだしてくれた。

もっと謎解きを楽しもうと思ったが、ここは直球勝負「その葉書、誰に出すんだ」と聞いてみた。

すると「友達だよ」と下に目線を落としたが、こんどは「仲の良い友達なんだ」笑顔と大きな声で繰り返し言った。

「そっか、友達か。遭った時に伝えたら駄目なのか?ファックスでもいいんじゃないのか?なんならメールでも」と時代の文明の力を使ったらと言わんばかりに息子に聞いてみると

こんな言葉が返ってきた。「遠い所にいるんだ」

またまた疑問の嵐だ。ファックスだって、メールだって、いくら遠くても伝えられるだろ。幼いからまだ頭で理解出来ていないんだなと思い、また同じ事を言ってみた。

「ファックスもメールもいくら遠くても伝えられるんだよ」と言うと

おこり、それでいて今にも泣きそうな声で「遠くにいるんだって」

俺は状況が掴めず、頭を巡らしてみる「んー」そういえば息子が4歳の時に出来た大の仲良しの友達を思い出した。あの子に送るのか。でも、遠くって何だ。そうこうしていると妻が言っていた事が頭を通り抜けようとして、ハッと思う。ゆうとの友達の智樹君が難病にかかっている話を2、3ヶ月前にしていた記憶だ。そうだ。でも、どうして・・・

ゆうとは「葉っぱじゃぁなきゃ届かないんだ」と

そこで俺は状況が把握出来た。もしかして智樹君は天国に行ってしまったのだと。俺の子は心のこもったハガキが葉っぱになり風に舞って天国の智樹君に届くようにと思っていたんだ。家族だからこそ、そう確信が持てた。そして何か目頭が熱くなるのを感じた。ハガキのように1枚が1通になり1葉になるように自分の息子も感情を持ち心を持ち繋がりを持つ人になろうとしているんだなと人として親として心が喜んでいた。

よくよく聞いて見るとゆうとと智樹君は、いつも何かと言えば男の約束だぞといっては遊んでいたようだ。そして、1年後の誕生日も「一緒に遊ぼうな。男の約束だぞ」と言って約束をしていたらしい。男の約束だぞという言葉をどこから聞いて真似ているのか解らないが頼もしく思う一面でもあり笑みがこぼれた。

そしてゆうとと俺は西陽の空がオレンジ色に染まる公園の帰り道を歩き出し、コンビニに立ち寄ってハガキを買い「男の約束だからな」と冗談半分に言って、ゆうとにハガキを手渡した。するとゆうとは「ともきと男の約束を守らなきゃ」と言いニコッと今まで見た事のない笑顔を俺に見せた。

             お   わ   り

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